「えっと……。ネットで公開する予定なんだよね」
「うん。学校SNSだけじゃなくって、演劇関係の内部サイトで見られるような感じ」
舞香の肩がすり寄ってくる。
彼女的にはスマホを掲げて撮影している、その小さな画面を一緒にのぞいて欲しいらしい。
どうしてスマホはこんなに小さい上に、両手で撮影しなければいけないんだ。
「画角って分かる?」
「撮影する時の、画の構図ってこと?」
彼女の手に触れないよう、わずかにその角度を変える。
「あぁ、うん。ま、いっか。それと、焦点を合わせるってこと」
「勝手にピント調節してくれるんじゃないの?」
「あーうん。それでいいと思うよ」
肩までの黒髪が鼻先をくすぐる。
近づきすぎた距離に、慌てて離れる。
彼女はちょっとムッとした顔をした。
「演劇って、基本舞台の上でしかやらないからさ。もちろん、そうじゃないのもあるけど」
「そうだね」
「私はスケジュール管理とか買い出しばっかで、こういうの初めてなんだ。だからどんくさいかもしれないけど、ゴメンね」
「いや、それは大丈夫……」
気づけば荒木さんは演劇部員の中心に戻っていて、台本のようなものを片手に何かしゃべっている。
舞香の掲げるスマホの画面越しに、そんな荒木さんにレンズを向ける希先輩の姿が写った。
「……まぁいいや。ピント調節とかも、使うカメラによって違うから」
「じゃあどうすればいいの?」
どうすればいいんだろう。
俺はこのまま、こんなことをしていていいんだろうか。
小さな画面の向こうで、希先輩はどこかに行ってしまった。
「ビデオカメラとかないの?」
「ハンディカムってやつ? あるけど古い」
「じゃあスマホ撮影でつなげるか。それなら台数もあるしね」
「ねぇ、本気で面倒くさいって思ってるでしょ」
「今さらそんなことないって」
なんだか非難じみた表情で見上げられたけど、本当にそんなことはどうだっていい。
「とりあえず好きなように撮ってみて。それで編集してみて、どうやって撮った方が後から楽になるとか、分かってくると思うから」
「はーい」
「本当はビデオカメラとかがあった方がいいと思うけど。容量とかズームした時の、画質とかの問題だけだけど……」
「はーい」
放課後の校庭を、爽やかな風が吹き抜ける。
てか、なんで俺が教えることになってるんだろう。
通りかかったみゆきに文句を言ったら、「まぁまぁ」とか言ってニヤニヤされただけだし。
その舞香はスマホを掲げたまま、前後左右に動きながら、演劇部員たちを撮影している。
太陽からの光りは柔らかく彼女に降り注ぎ、真剣な表情の横顔は、時折かけられる冗談に笑う。
吹く風が彼女の肩までの髪を揺らした。
「うん。学校SNSだけじゃなくって、演劇関係の内部サイトで見られるような感じ」
舞香の肩がすり寄ってくる。
彼女的にはスマホを掲げて撮影している、その小さな画面を一緒にのぞいて欲しいらしい。
どうしてスマホはこんなに小さい上に、両手で撮影しなければいけないんだ。
「画角って分かる?」
「撮影する時の、画の構図ってこと?」
彼女の手に触れないよう、わずかにその角度を変える。
「あぁ、うん。ま、いっか。それと、焦点を合わせるってこと」
「勝手にピント調節してくれるんじゃないの?」
「あーうん。それでいいと思うよ」
肩までの黒髪が鼻先をくすぐる。
近づきすぎた距離に、慌てて離れる。
彼女はちょっとムッとした顔をした。
「演劇って、基本舞台の上でしかやらないからさ。もちろん、そうじゃないのもあるけど」
「そうだね」
「私はスケジュール管理とか買い出しばっかで、こういうの初めてなんだ。だからどんくさいかもしれないけど、ゴメンね」
「いや、それは大丈夫……」
気づけば荒木さんは演劇部員の中心に戻っていて、台本のようなものを片手に何かしゃべっている。
舞香の掲げるスマホの画面越しに、そんな荒木さんにレンズを向ける希先輩の姿が写った。
「……まぁいいや。ピント調節とかも、使うカメラによって違うから」
「じゃあどうすればいいの?」
どうすればいいんだろう。
俺はこのまま、こんなことをしていていいんだろうか。
小さな画面の向こうで、希先輩はどこかに行ってしまった。
「ビデオカメラとかないの?」
「ハンディカムってやつ? あるけど古い」
「じゃあスマホ撮影でつなげるか。それなら台数もあるしね」
「ねぇ、本気で面倒くさいって思ってるでしょ」
「今さらそんなことないって」
なんだか非難じみた表情で見上げられたけど、本当にそんなことはどうだっていい。
「とりあえず好きなように撮ってみて。それで編集してみて、どうやって撮った方が後から楽になるとか、分かってくると思うから」
「はーい」
「本当はビデオカメラとかがあった方がいいと思うけど。容量とかズームした時の、画質とかの問題だけだけど……」
「はーい」
放課後の校庭を、爽やかな風が吹き抜ける。
てか、なんで俺が教えることになってるんだろう。
通りかかったみゆきに文句を言ったら、「まぁまぁ」とか言ってニヤニヤされただけだし。
その舞香はスマホを掲げたまま、前後左右に動きながら、演劇部員たちを撮影している。
太陽からの光りは柔らかく彼女に降り注ぎ、真剣な表情の横顔は、時折かけられる冗談に笑う。
吹く風が彼女の肩までの髪を揺らした。