地上が近づくと彼女は閉じていた目を開け、きょろきょろと見回す。
辺りに人気はなく、周囲も暗い。
だけど俺にはそれは、彼女が動揺しているようにも見えた。
ふわりと地上に降り立ったその女の子は、三脚のすぐ横を通り過ぎる。
しまった。
カメラ持って逃げればよかった。
小遣い貯めてやっと買ったカメラだったのに……。
三脚はどうでもいい。部の共用品だ。
だけどカメラだけは何とかならないものか……。
半透明の彼女は池の縁に立つと、じっとその水面を見下ろした。
え、どうしよう。
このままどこかへ行ってくれなかったら、俺はあのカメラを諦めるしかないのだろうか。
ヘンに近寄って妙なことに巻き込まれたくなんかないし、余計なことをして襲われたくもない。
あのカメラさえいまこの手に握っていたら、さっさと逃げ出して帰れたのに……。
備品の三脚はどうなっても、後で怒られるくらいの覚悟はある。
反省文だって書ける。
だけどあのカメラだけは、なんとか救い出したい!
彼女が振り返った。
不思議そうに校舎を見上げている。
その校舎の陰から、一人の女の子が出てきた。
去年同じクラスだった内村舞香だ。
それほど親しい間柄ではないけど、まぁ普通にしゃべるくらいはしたことがある。
演劇部の彼女は、衣装や小道具やらを詰め込んだ段ボール箱を抱え、とことこやってきた。
彼女は半透明の少女にまだ気づいていない。
彼女を見つけた瞬間、幽霊のようなその女の子は、パッと動いた。
「えっ……」
一瞬の出来事だった。
その半透明の体は、彼女と重なったかと思うと、そのまま吸い込まれてゆく。
舞香は持っていた段ボールごと、ガクリと地面に倒れた。
体を乗っ取られ意識を失ったのか、そのまま動かない。
「ちょっと待って……。嘘だろ?」
助けに行ってやりたいが、俺にそんな勇気はない。
すぐに気づいた彼女は、頭を抱えながら起き上がる。
落としてしまった段ボールに気づいて、散らかったものを拾い集めた。
頭を気にしながらも立ち上がると、そのままこっちへ向かって歩いてくる。
もう逃げられない!
俺は覚悟を決めると、隠れていた階段裏から一歩を踏み出した。
辺りに人気はなく、周囲も暗い。
だけど俺にはそれは、彼女が動揺しているようにも見えた。
ふわりと地上に降り立ったその女の子は、三脚のすぐ横を通り過ぎる。
しまった。
カメラ持って逃げればよかった。
小遣い貯めてやっと買ったカメラだったのに……。
三脚はどうでもいい。部の共用品だ。
だけどカメラだけは何とかならないものか……。
半透明の彼女は池の縁に立つと、じっとその水面を見下ろした。
え、どうしよう。
このままどこかへ行ってくれなかったら、俺はあのカメラを諦めるしかないのだろうか。
ヘンに近寄って妙なことに巻き込まれたくなんかないし、余計なことをして襲われたくもない。
あのカメラさえいまこの手に握っていたら、さっさと逃げ出して帰れたのに……。
備品の三脚はどうなっても、後で怒られるくらいの覚悟はある。
反省文だって書ける。
だけどあのカメラだけは、なんとか救い出したい!
彼女が振り返った。
不思議そうに校舎を見上げている。
その校舎の陰から、一人の女の子が出てきた。
去年同じクラスだった内村舞香だ。
それほど親しい間柄ではないけど、まぁ普通にしゃべるくらいはしたことがある。
演劇部の彼女は、衣装や小道具やらを詰め込んだ段ボール箱を抱え、とことこやってきた。
彼女は半透明の少女にまだ気づいていない。
彼女を見つけた瞬間、幽霊のようなその女の子は、パッと動いた。
「えっ……」
一瞬の出来事だった。
その半透明の体は、彼女と重なったかと思うと、そのまま吸い込まれてゆく。
舞香は持っていた段ボールごと、ガクリと地面に倒れた。
体を乗っ取られ意識を失ったのか、そのまま動かない。
「ちょっと待って……。嘘だろ?」
助けに行ってやりたいが、俺にそんな勇気はない。
すぐに気づいた彼女は、頭を抱えながら起き上がる。
落としてしまった段ボールに気づいて、散らかったものを拾い集めた。
頭を気にしながらも立ち上がると、そのままこっちへ向かって歩いてくる。
もう逃げられない!
俺は覚悟を決めると、隠れていた階段裏から一歩を踏み出した。