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 皐の作戦が失敗した。

 東の空が明るくなり、夜の闇が溶けだしていく早朝。私と皐は、施設と外を遮る鉄柵の前で男達に乱暴されていた。私のTシャツは縦に引き裂かれ、ジーンズは膝まで下ろされていた。下着はとっくに剥ぎ取られていて、鉄柵の前で正体不明の黒ずくめの男がその下着の匂いを嗅ぎながらオナニーをしていた。私自身はやはり誰だか分からない三人の男達に犯されていた。乳首を乱暴に揉まれて、噛まれ、強引に××を散らされていた。私は滲んだ視界を皐の方に移す。皐は怒りと悲しみの入り混じった声で男達を罵倒していたが、両腕を一人の男に抑えつけられ、別の黒い覆面を被った背の高い男が彼女に覆い被さっていた。

 何でこんなことになったんだろう。

 籤のルールを破ったからだ。

 ルールを破った者には、相応の罰が下される。それはこの柵の中でも柵の外でも同じことだった。たとえ、それがどんなに理不尽なルールであろうと。


 ――お願い、杏、あたしと逃げて。

 
 皐に昨夜、そう懇願されて私は実行した。

 この養護学校(という名の牢獄)で私達は養鶏所の鶏みたく薬の混ぜられた餌を食わされて、授業という名の洗脳を施されていた。私は、すぐに皐に同意した。籤のルールだって冗談じゃない。どこの誰とも知らない男達の慰み者になるために、私は生まれきたんじゃないし、生きてきたんじゃない。ロリコンの変態どもに抱かれてやるために生きてきたんじゃないんだ。

 だけど、現実はあくまでも非情だ。

 部屋から逃げ出して、脱走しようとした私達を待っていたのは、盗んだ鍵では開かない重い扉と、いつも無表情に私達を見下ろしている三メートルの鉄柵、それに茂みに隠れていた男達だった。校内の保健室で毎夜繰り広げられる陵辱劇の場所が、ここになっただけ。

 犠牲者に私が加わっただけ。

 私達は鉄柵も、ルールを乗り越えられなかったのだ。

「うわあっ、ああっ、ああああああああああああああっ!」