16

 次の日の早朝、加藤杏からのメール。



 前略、緒方へ。

 昨日は会えなくてごめん。

 あの時はあんたの顔見たら、私、何するか自分でも分からなくて怖かったんだ。

 心配させてごめん。来てくれて嬉しかったよ。

 昨夜は和さんのお通夜で、これから告別式なんだ。

 東京から来た馬鹿親父の秘書と二人だけでね。

 あいつ、自分の妹が死んでも来やしないんだ。ふざけてるよね。

 それから、私、また転校することになったよ。

 保護者の和さんが死んじゃったから、S島にある全寮制の学校に移るんだ。

 そこは、私みたいな頭のおかしい子達を治療しながら、勉強も教えてくれるんだってさ。

 そんな学校があるなんてびっくりだよ。

 これで、私のヒドデナシも治って、人になれるかもしれないね。

 別になりたくもないけど(笑)

 私はたまに思うんだ。

 本当は私や緒方がマトモで、周囲の皆がヒトデナシなんじゃないかって。

 だって、本気で好意を持ったら救ってあげたいじゃん?

 そのために私達に出来ることって何なんだろうね。

 S島は静かなところらしいから、一人でゆっくり考えてみるよ。

 じゃあね、緒方。

 生きててね。

 絶対、死んじゃダメだよ。




 あんたを殺していいのは、私だけ。
 私が殺すのは、あんただけだよ。