そこからの僕の記憶は、ひどくあいまいなものになっていた。未だに燃えさかるベンツとそれを鎮火させようと必死に消火活動をする消防隊員。たまに飛んでくる火の粉。「和さん、和さん」と泣きながら担架で運ばれていく女性の後を追う加藤の背中。赤い回転灯を明滅させ、サイレンを鳴らして車道を走っていく救急車。僕は全身に焼けるような熱気を浴びながらも、その場に足裏が貼り付いたように突っ立っていた。あれ? 僕はいったい何をしているんだ? 加藤はどこに行ったんだ? おかしいぞ。さっきまで一緒に居たのに。昼飯を一緒に食べて、コンビニでアイスを買って、これから、加藤の家で、一緒に涼みながら色々な話をしようと思っていたのに。
加藤、何故、君はここにいないんだ?
僕は、気がついたら、黄色いテープをくぐって、加藤の家から離れて、ふらふらと歩道を一人で歩き出していた。かろうじて、携帯で学校に連絡をしたことは覚えている。そして、家に帰ると、母親は僕の姿を見て、大層驚いていた。制服のあちこちが焦げていて、全身が汗まみれで、ひどく顔色が悪かったらしい。自分では覚えてないが僕は母に「寒い」と言ったらしい。母は僕を病院に連れて行こうとしたが、僕は玄関にうずくまって泣いたという。僕は震えながら思った。
加藤に会いたい、会わなきゃ、と。
加藤、何故、君はここにいないんだ?
僕は、気がついたら、黄色いテープをくぐって、加藤の家から離れて、ふらふらと歩道を一人で歩き出していた。かろうじて、携帯で学校に連絡をしたことは覚えている。そして、家に帰ると、母親は僕の姿を見て、大層驚いていた。制服のあちこちが焦げていて、全身が汗まみれで、ひどく顔色が悪かったらしい。自分では覚えてないが僕は母に「寒い」と言ったらしい。母は僕を病院に連れて行こうとしたが、僕は玄関にうずくまって泣いたという。僕は震えながら思った。
加藤に会いたい、会わなきゃ、と。