「四つ下の妹が肺炎になって伏せっている時に、僕は心配で心配でずっと妹のそばにいて看病していたんだ。いつも僕をお兄ちゃん、お兄ちゃんって呼んで走ってついてくる元気で可愛い妹だった。すごく可愛がってたはずだよ。そんな妹が苦しそうに何度も咳をして苦しいって泣くんだ。だけど、当たり前だけど、僕は彼女に何もしてあげられないんだよ。何とか彼女を苦しみから解放してあげたいって、とても思い詰めたところまで覚えている。その後のことは記憶してない。数分間分の記憶が飛んでるんだ。でも、気がついたら妹が激しく泣いて、僕の両手の甲に爪を立てて叫んでた。お兄ちゃん、どうして私の首を絞めるの? って。僕は妹の首から両手を放して、慌てて自分の部屋に駆け込んで一晩中泣いていたよ」
「その後、妹さんはどうしたの?」
「肺炎は治ったけど半年後に、交通事故で」僕はその先の言葉を濁した。
「そう」加藤は視線をアブラゼミに戻して、短く答えた。
「妹はあのことは親にも誰にも話さなかった。でも人が変わったように無口になって、僕を避けるようになったんだ。当然だけどね。小学校にも僕とは一緒に行かなくなった。そのせいで、車に轢かれたんだ」
僕はそこまで話すと、口をつぐんだ。
もう、僕の衝撃のカミングアウトはお終いだ。
なのに、
「それで?」
加藤は今度は、僕の方を向き直り、夏の陽光の中で、それよりも強く鋭くそして冷たい眼光を放ちながら僕に超然とした表情を向けていた。
「それで、全部だよ」
「ウソつき」
加藤は静かだが、微かに怒りの感情を含ませた声色で、僕を糾弾した。
「その後、妹さんはどうしたの?」
「肺炎は治ったけど半年後に、交通事故で」僕はその先の言葉を濁した。
「そう」加藤は視線をアブラゼミに戻して、短く答えた。
「妹はあのことは親にも誰にも話さなかった。でも人が変わったように無口になって、僕を避けるようになったんだ。当然だけどね。小学校にも僕とは一緒に行かなくなった。そのせいで、車に轢かれたんだ」
僕はそこまで話すと、口をつぐんだ。
もう、僕の衝撃のカミングアウトはお終いだ。
なのに、
「それで?」
加藤は今度は、僕の方を向き直り、夏の陽光の中で、それよりも強く鋭くそして冷たい眼光を放ちながら僕に超然とした表情を向けていた。
「それで、全部だよ」
「ウソつき」
加藤は静かだが、微かに怒りの感情を含ませた声色で、僕を糾弾した。