ばたん、と重い金属音を鳴らして、扉が閉まり、加藤は陽光とともに、僕の前から消えた。僕はその場で立ち尽くしている。部屋に静けさが戻り、僕は床にずっとうずくまったまま、藤原が嗚咽を漏らしていることにようやく気がついた。でも、言葉をかけるつもりはない。僕はつっ立ったままでいる。加藤の残した気配が薄れていくのが、とても寂しい。

「あたしだって、好きでこの世に産まれてきたわけじゃないよ、杏、緒方さん……」

 藤原が泣きながら、ぽつりとそんなことを言った。

 まったくその通りだと、僕も思った。