私の口からついて出た言葉は、あまりにもそっけなかった。もっと気の利いた言葉はないのかと自分でも思ったけど、思いつかない。だって、子供達は全員同じ可能性の中で籤を引き続けたのだ。特別皐だけが可哀想なわけではない。明日は私かもしれないのだ。でも、私の瞳から一筋の涙が勝手にこぼれた。泣く理由は分からない。彼女への哀れみなのか、私達が抱えた残酷な運命に対する悔しさなのか。ああ、何て無力で無様なんだろう。

 私は、何も、できな、

「お願い、杏、あたしと逃げて」

 私の思考を読み取ったかのように、皐は私にまだ出来ることはあると伝えてきた。

 その言葉は、弱気になりかけていた私を揺り動かした。

「いいよ」

 私は彼女の持つ籤を奪い取り、両手で真っ二つにへし折った。


***


 時間は、私と皐が犯された後の朝に戻る。

 ガスマスクを被った私はダチョウ牧場から持ち出した炭酸ガスを、生徒達が集まった教室内でまき散らした。

 私はダチョウの首をはねる時に使うサバイバルナイフを手に、眠りについた彼らを見て思った。

 良かった。

 本当に良かったよ。

 緒方、ここにあんたがいなくて――。