「そうだ。家族に連絡、取れた?」

「いえ……」

「まだ、繋がんないのかもね。」

小野寺はそう言ったが、朝美は違っていた。

逃げる事に精一杯で、そこまで頭が回らなかった。


「すみません。」

朝美は小野寺に、小さく頭を下げると、携帯を取り出した。

姉の優美に、兄の健吾に電話をかけても繋がらない。

何度もかけても、流れるアナンスは一緒。


|《混み合っておりますので、後ほどおかけ直しください。》


朝美は少し迷った末に、弟の修吾(シュウゴ)へ電話をかけた。

修吾は、東京で一人暮らしをしていた。


『もしもし?朝美姉?』

いつもの修吾の声だ。

「うん。」

『よかった!無事だったんだな。』