「もう、建物以外、波で見えないよ。」

まるでバラエティ番組で出てくるような映像。

でも違う。

今、実際に近くの港が津波に襲われていて、紛れもなくこの日本の、宮城県で起こっている、現実なのだ。


そんな中、瞳が仲間の一人に連れられて、やってきた。

「家に、通じない……」

そしてまた瞳が、涙を浮かべながら携帯をかける。

「まだ、繋がらないよ。」

誰かが慰めの言葉をかけた。

だが優美は、そんな言葉すらかけてあげる事ができない。


「瞳ちゃん。」

優美は瞳を抱き寄せた。

「大丈夫。家族は無事だって。」

「でも、でも!……港が…」

瞳の実家は、津波に飲み込まれたあの気仙沼港の近くだ。

「みんな、逃げてるよ!大丈夫だよ。」