「中に荷物があるんですが……」

瞳は事情を話した。

「安全が確認されるまでは、ご遠慮ください。」

優美と瞳は、互いに顔を見合わせた。

タイミングの違いで、荷物を持って逃げる事が出来る人、できない人。

この寒空の下、上着を着る事ができる人、できない人がいるなんて。


「皆さん、一列に並んで下さい!出発します!」

近くの小学校に避難すべく、優美達は歩き出した。

歩いている途中でも、地震の大きさを見せつけられた。


「ねえ、見て。」

瞳が指差す方に、優美は目を止めた。

「瓦が落ちている。」

もう、一枚二枚の騒ぎではない。

原形を留めていない程、瓦は全て落ち、道の半分を塞いでいた。