「はあ。お噂はかねがね。」

「座ってもいいですか?」

「どうぞ。」

女同士の戦いみたいで、俺は窓のサッシに手をつけて、耳をダンボのように広げて、話を聞く事にした。

「主人から聞きました。胃癌だそうですね。」

「はい。」

「治療を拒否されているのは、どうしてですか?」

「あなたに言う必要はありません。」


側で聞いていた人も、唖然としただろう。

いいところでストップをかけなければ。

俺は窓に背中を向けた。