その日は、久しぶりに眠れなかった。

ベッドの上で目を閉じても、藤間さんの顔が思い浮かんで、振り払っては浮かんできた。

「くそっ!」

どうしても眠れない俺は、キッチンに行って、水を一杯飲んだ。

一人の患者の為に、眠れないなんて。


胸が軋むように痛くて、手でシャツを握りしめた。

相手の人生を思う為に、自己を犠牲にして、その挙句に胃癌になるなんて。

悲しい。悲しすぎる。


そして、解っている。解っているんだ。

藤間さんの事を、いつの間にか、一人の女性として、俺が見ているという事実を。