藤間さんの元恋人だという宮古さんは、ポツポツと昔の事を話し始めた。

「美生とは、ドラマの撮影で知り合ったんです。俺が主人公で、美生がヒロインで……」

ありきたりな配役だなとは思ったけれど、そのドラマを観ていないのだから、とやかく言う事ではない。

「美生は、明るくて優しくて。俺は、すぐ彼女を好きになりました。ウチの事務所は、恋愛にうるさいんですけどね。直ぐに仲良くなって、勢いで告白したんです。そうしたら美生も嬉しいって……」

そう話たら、宮古さんは涙ぐんだ。

「なんで、あの時の気持ちを、思い出さなかったんですかね。お互い好き同士で付き合ったのに。なんで……」

その手の話は、俺は疎い。

彼女も、大学時代に付き合って、医者という仕事の忙しさにかまけて別れてしまった。

二人の言う長い春など、俺は味わった事がなかった。