今日もちょっとだけ残業して帰ろうかな。帰りにスーパー寄って、お惣菜とお酒買って、家で飲もう。1人だけど、それも気楽でいいし。


「来週の土曜日空いてない?」


スピーカーホンにして電話しながら買って来たレモンサワーを飲む。ちょうど缶を開けたところで電話がかかって来たから。


「来週…空いてるけど、しいこっち来る予定でもあるの?」


中村しいな、笹森の地元の友達。宏太くんとも仲良くて、仲間内で飲んだ時に仲良くなった女の子。しいって呼んでる。

正方形のローテブルを前にフローリングに座ってソファーにもたれ、ぐびーっとレモンサワーを流し込む。


「うん、だから空けといてよ」

「彼氏に会いに来るんじゃないの?」


しいの彼氏は東京に住んでて、言わば遠距離恋愛だ。


「うん、まぁ、そうなんだけど」


若干歯切れ悪いけど絶対そうでしょ、そう思いながらゴクゴクーっとさらにレモンサワーを飲んだ。
てか宏太くんといい、まゆちゃんといい、みんなわりとフッ軽で来る。
宮城ってそんな近所だったっけ?
私には結構遠い距離なんだけど?


「で、彼氏の友達なんだけど今恋人いないらしくて、みぃもいないんでしょ?欲しくない?彼氏」


しいにはみぃって呼ばれてる。


「…確かに彼氏は欲しい」

「じゃあ会ってみない?」

久しくそんな出会いもなかった。
ずっと忙しかったし、それどころじゃないっていうか、なんていうか。もうどれだけいないんだっけ。考えるのも嫌なくらい。

春が終わって夏が来る前に欲しいなそんな人。そしたら大嫌いな冬だって平気かもしれない。


「いいよ!会う!!!」


ドンッと空になったレモンサワーの缶を机に置いた。