「今日も楽しかったなーーーーー!」


お店を出るや否や、真っ暗な空に向かって笹森が両手を上げて叫んだ。どこぞの海賊王ばりに。

ご機嫌に歩き出す隣をまゆちゃんが一緒に歩く。

その後ろで宏太くんと2人並んで歩いた。


「今日どこ泊るの?笹森ん家?」

「んー、そのつもりだったんだけどまゆ氏いるからテキトーに漫喫でも探そうかなーって」

「そっか、確かにちょっと気遣うよね」


うちは空いてるけど、さすがに宏太くんを泊めるのはな…女の一人暮らしにそれはさすがにまずい。


「この辺漫喫あったかなー、私あんまり行かないからわかんないんだよねー」


トレンチコートのポケットから携帯を取り出してマップを開く。漫画喫茶と入力して周辺地図を探した。


「ねぇ、未来氏」

「ん?あ、ありそうだよ漫喫」

「明日って暇?」


急な言葉に思わず視線を向ける。宏太くんは背が大きくて、空を見るみたいに首を傾けた。


「遊ばない?2人で」


ぎこちないながらもストレートなその言葉にちょっとだけ迷った。

宏太くんと2人でって、だってそんなそれって、デートみたいな。
あ、デートなのか。
デートだよね…?


「いいよ」


でも思いの外すんなり答えが出た。


「マジで?やった、じゃあ明日よろしくね」


そんな風に目を細めながら笑って言われたら、嫌な気はしない。

宏太くんはいい人だし、話しやすいし、結構悪くないから。