笹森がすでに予約をしていたというどこにでもあるチェーン店の居酒屋に入った。


「全然仕事が見付からなくてね、東京の生活難しい…っ」


お酒を飲む私たちの真ん中でカルピスを飲む笹森の彼女のまゆちゃんが誰よりお酒に飲まれたテンションでため息をついた。


「東京は生きずらいね…」


それはそれは深いため息で相当苦労しているのが目に見えた。


「まゆ氏、もう東京という名の渦に飲まれたのか」


そんなまゆちゃんに宏太くんが枝豆を差し出した。無言で枝豆を剝き始める。

確かに東京は物価も高いし、人は多いし、ビルは高いし、もう慣れてしまったけど息が詰まるところだなとは思う。
煌びやかな世界に憧れてこっちへ来たけど、現実は全然輝いていない。

そんな街だもの。


「まゆ氏がこっちに帰ってくるのも時間の問題かな～」

「帰らないし！絶対帰らない！千紘くんとここで暮らすんだから！」


それを聞いて笹森もうんと頷いた。

ねっ、て2人で目を合わせちゃったりして。

なんて眩しいんだ。

いいな、東京にときめき感じてて。

なんだかすごくお酒が進む。