「いやだからって3ヶ月も会ってないってどーんなんだ!?」

「笹森には言われたくないんだけど、あんだけまゆちゃんのことほっといたくせに!」

「それは言うな!わかってるよ!」


ちょっとだけ仕事が遅くなった夜、家に帰って食事の用意をするのもめんどくさくて笹森と近くの居酒屋に入った。
どこでもあるチェーン店のカウンターで、並んで2人して頼んだビールはすぐ運ばれてきた。


「…いいの?それで真中は」

「お互い忙しいんだからしょうがないよ」

「そうだけど…」


一緒に運ばれてきたお通しの枝豆を丁寧に食べる。


「大人なんだからさ、わがまま言ってもしょうがなくない?」

「…そうだよなー、そんな大人になっちゃったよなー」

「ね、残念だけどね」


ゴクゴクと笹森がビールを流し込んだ。
大人なんだから、まるでその言葉を流し込むみたいに。

大人になれば自由だと思ってた。
でも実際は縛られることが多くて…じゃなくて、諦めることが多くなったのかもしれない。


「てか今日まゆちゃんは?笹森こそいいの?私と飲んでて」

「今日職場の歓迎会なんだって」

「あ!仕事決まったんだ!よかったね!」

「服屋の販売員だって。真中も行ってやってよ」

「行く行くー!」


東京でのまゆちゃんの生活が始まったんだ。

きっと今すごく充実してるんだろうな。

なんでかそれが少し羨ましく思った。