(春音side)
眠っていた目を開けると、見知らぬ天井が映った。
それから、首だけで辺りを見回してみる。
大きな窓の風景。
固定されて動かせない右足。
壁に掛かっている、傷づいた制服。
そう、ここは病室だ。
わたしは生きていたんだ。
そして、10年ぶりにやってきた……。
・・・
看護師さんがやってきた。
わたしは熱を測って彼女に体温計を渡した。
すると、その人はなんだか楽しそうな表情をしている。
「すてきなお名前ですね。
春が付いた名前だから、春ちゃんと呼びましょうか」
クラスでもこの愛称で通っているから別に悪い気はしない。
とりあえず頭を下げておくことにしよう。
それから、お姉さんは秋華という名前だと教えてくれた。
「今日も熱はないようですね、さすがです!」
彼女は明るくはきはきした声でわたしに声をかけてくれた。
もう一言伝えてきた。
わたしは上の空だったからなんて返したか気にしなかった。
看護師さんが戻ってしまった。
わたしは窓の外に目を向けた、大きな窓枠に青空が写っている。
窓の外から見える景色の方がテレビより楽しいだろうなあと思ったんだ。
それから、壁に掛かっている制服に目をやった。
それを見ながら、大きなため息をついた……。
・・・
卓上の時計が午前10時を指していた。
わたしは何もすることが無いので、ベッドの上から外の景色を眺めてみる。
文化祭はもう終わっているな。
ぶつかったガラス板は1枚だけだから、残りでなんとか実施できたと思うんだ。
でも、みんなに迷惑をかけたのは事実だよね。
……血の海なんて、わたし自身、もう見たくなかった。
窓の外は雲が増えて、微かにくすんだような色に変わっていく。
ちょうど窓のある方角に駅ビルのデパートがあるのに気づいた。
そうすると、あっちは学校の方なんだなあ。
考えていると窓の縁にハトが止まって、すぐに飛んで行ってしまう。
合流して4羽になって飛んでいる、自由そうでいいなあ。
<おやつタイム>のみんなを想像して、思わず手を伸ばしてみた。
「いつもあそこに居るのになあ」
わたしはぽつりと呟いた。
まるで、外の景色は窓枠を額縁にしたような<展覧会の絵>みたいだった。
だからこんな言葉を思いついたんだ。
<キリトリセカイ>
この風景を絵画や写真みたいに切り取れたらなあ。
本当にそうだ。
・・・
卓上の時計が正午を教えてくれた。
看護師さんが再びやってきて、お昼ご飯を運んできた。
彼女はわたしの前にびしっと立って、こちらを見ながら言ったのだ。
「朝も言いましたけど、ちゃんと食べてくださいね。
あなた朝ご飯食べてないでしょう」
それでも彼女はまだ戻っていかない。
それからね、といたずらっぽい笑みを浮かべて言ったのだ。
「ふふふ。
あなた、あれだけの怪我をしたのにやっぱり可愛いですね。
一緒に救急車に乗って、輸血までした子がいるんですよ」
春ちゃん、魅力あるのね!さすがです!!と言うと、緩く縛ったウェーブの髪を揺らしてナースセンターに帰っていった。
……誰だろう。
・・・
眠っていた目を開けると、見知らぬ天井が映った。
それから、首だけで辺りを見回してみる。
大きな窓の風景。
固定されて動かせない右足。
壁に掛かっている、傷づいた制服。
そう、ここは病室だ。
わたしは生きていたんだ。
そして、10年ぶりにやってきた……。
・・・
看護師さんがやってきた。
わたしは熱を測って彼女に体温計を渡した。
すると、その人はなんだか楽しそうな表情をしている。
「すてきなお名前ですね。
春が付いた名前だから、春ちゃんと呼びましょうか」
クラスでもこの愛称で通っているから別に悪い気はしない。
とりあえず頭を下げておくことにしよう。
それから、お姉さんは秋華という名前だと教えてくれた。
「今日も熱はないようですね、さすがです!」
彼女は明るくはきはきした声でわたしに声をかけてくれた。
もう一言伝えてきた。
わたしは上の空だったからなんて返したか気にしなかった。
看護師さんが戻ってしまった。
わたしは窓の外に目を向けた、大きな窓枠に青空が写っている。
窓の外から見える景色の方がテレビより楽しいだろうなあと思ったんだ。
それから、壁に掛かっている制服に目をやった。
それを見ながら、大きなため息をついた……。
・・・
卓上の時計が午前10時を指していた。
わたしは何もすることが無いので、ベッドの上から外の景色を眺めてみる。
文化祭はもう終わっているな。
ぶつかったガラス板は1枚だけだから、残りでなんとか実施できたと思うんだ。
でも、みんなに迷惑をかけたのは事実だよね。
……血の海なんて、わたし自身、もう見たくなかった。
窓の外は雲が増えて、微かにくすんだような色に変わっていく。
ちょうど窓のある方角に駅ビルのデパートがあるのに気づいた。
そうすると、あっちは学校の方なんだなあ。
考えていると窓の縁にハトが止まって、すぐに飛んで行ってしまう。
合流して4羽になって飛んでいる、自由そうでいいなあ。
<おやつタイム>のみんなを想像して、思わず手を伸ばしてみた。
「いつもあそこに居るのになあ」
わたしはぽつりと呟いた。
まるで、外の景色は窓枠を額縁にしたような<展覧会の絵>みたいだった。
だからこんな言葉を思いついたんだ。
<キリトリセカイ>
この風景を絵画や写真みたいに切り取れたらなあ。
本当にそうだ。
・・・
卓上の時計が正午を教えてくれた。
看護師さんが再びやってきて、お昼ご飯を運んできた。
彼女はわたしの前にびしっと立って、こちらを見ながら言ったのだ。
「朝も言いましたけど、ちゃんと食べてくださいね。
あなた朝ご飯食べてないでしょう」
それでも彼女はまだ戻っていかない。
それからね、といたずらっぽい笑みを浮かべて言ったのだ。
「ふふふ。
あなた、あれだけの怪我をしたのにやっぱり可愛いですね。
一緒に救急車に乗って、輸血までした子がいるんですよ」
春ちゃん、魅力あるのね!さすがです!!と言うと、緩く縛ったウェーブの髪を揺らしてナースセンターに帰っていった。
……誰だろう。
・・・