と金井が、彼女を呼んだので、三人で応接テーブルを囲むことになった。
「ええと、・・・来年度の給与のことだけど・・・」
という金井の切り出しで、経理担当の福原が呼ばれた理由を土岐は理解した。
「来年度から、年俸制にしたいんだけど、どうだろう。総額では若干増えると思うが、交通費込みで、ボーナスなしで、均等払い・・・どうかな」
と金井は、前かがみになって、上目使いで土岐と福原の顔色をうかがう。低い鼻から眼鏡がずり落ちて、眉根のあたりに見慣れない険しさが漂っている。拒否されることもありうるという彼の思いが読み取れた。金井は弁解じみた解説をする。
「まあ、君たちも薄々感づいているとは思うけど、政権交代以降、補助金の締め付けが強くなって、この種の公益法人の統廃合の案が出ている。いずれ国債の増発が困難になるような事態になれば、恐らく我々の財団法人に対する補助金は真っ先に切られる可能性がある。そうでなくても、似たような公益法人に吸収合併されるのは時間の問題だ。別に君たちに瑕疵はないのだが、無い袖は振れない。そうゆう訳で、保証できもしない終身雇用を前提としたような給与体系よりも、実質は何も変わらないのだが、年俸制にした方が、いきなり、来年度の人件費予算が組めないので、と言うよりも、君たちも心構えができて、いいのではないと思うんだが・・・」
「別に、異存はありませんが・・・」
と土岐が軽く言うと、福原は、
(もしや)
というような顔付きをする。
 金井は福原にたしなめるように言う。
 「福原さんも経理担当で、大体のことは分っているとは思うけど・・・」
 福原は意外というようなニュアンスで、
 「わたしも、ですか?」
とやや素っ頓狂な面持ちで訊いた。年下で、後輩の土岐と同じ扱いであることに不満とも疑問ともつかない思いが聞き取れた。
 金井は福原を突き放すように、
「そう、あなたも。全員だ」
と言う。言外に、
(事務局長である自分は違う)
というニュアンスと金井より古参であることをいいことに、遅刻や欠勤の多い福原に対する日ごろの憤懣が込められているようだった。
「わかりました。でも、それって、単年度契約ということですよね」
と福原が頬を軽く膨らませて承諾すると、金井は席を立った。彼女が土岐の意向をうかがうように目線を向けてきたが、土岐は、
(べつに)