「退学しないようにメンテを任されています。この大学は授業料、命ですから。殺されたというので、学生課で改めてファイルを見て顔写真と名前を確認したような状況で。美人ではないけれど、素直そうな子で」
と平林は幼児のような口調で話す。
「友人関係はわかりませんか。とくに身長が180センチをこえるような」
三沢は蒲田駅改札を通った男のプリントアウトした画像を見せた。
「この中に、見知った男はいませんか?」
平林はつまらなそうに目を落とした。
「見覚えはないですね。長身男子はクラスに何人かいますが、それが犯人なんで?」
と平林は三沢と目を合わせようとしない。
「いや、参考までにというだけで。そのクラスの中に親しそうな男はいましたか?」
「どうでしょう。かれらも1年生で、出あって1か月程度ですから。ゴールデンウイークあけで。ぼくも担当しているのはその科目だけで」
三沢はずっとボールペンを持つ手をとめている。
「クラブ活動とかは。はいっていませんでしたか?」
「個別面談をしたときには、興味をもっていなかったようで。大体、運動も文化活動も全く興味を持っていない連中で」
「担当しているクラスの学生が、ですか?」
「いいえ、全学的に。そもそも、今回、大学院の指導教授の紹介で非常勤になったんですが、都内にある大学にもかかわらず、初めて聞いた大学で」
「わたしも、そうでした」
と三沢が同調する。大田は浅く腰かけている平林の身長を目で測りながら爪を立ててレシートをつまみ上げた。
「参考までに、月曜日の夜8時頃、どちらにいましたか?」
平林の眉がつりあがった。
「失礼な。自宅ですよ」
大田は挨拶もせずに、レジに向かった。
二人は昼食をとったあと、被害者の自宅アパートに再び向かった。やっと電話連絡が取れた。根津駅から近い。発砲スチロールの細長い花壇が並べられた狭い路地の突き当りにその木造アパートはある。しもた屋風の門扉を開けると、長屋のような二階建てのアパートがある。低い灰白色の塀を隔てて、1階の部屋の窓がある。大田が声をかけた。1階右端のドアから無精ひげの男が顔を見せた。
二人は、2DKのダイニングキッチンに通された。天井が低い。
大田が先に口を開いた。
「このたびは、ご愁傷さまで。ご遺体はいまどちらですか?」
「近くの寺だ。明日火葬する。カネがかかる」
と平林は幼児のような口調で話す。
「友人関係はわかりませんか。とくに身長が180センチをこえるような」
三沢は蒲田駅改札を通った男のプリントアウトした画像を見せた。
「この中に、見知った男はいませんか?」
平林はつまらなそうに目を落とした。
「見覚えはないですね。長身男子はクラスに何人かいますが、それが犯人なんで?」
と平林は三沢と目を合わせようとしない。
「いや、参考までにというだけで。そのクラスの中に親しそうな男はいましたか?」
「どうでしょう。かれらも1年生で、出あって1か月程度ですから。ゴールデンウイークあけで。ぼくも担当しているのはその科目だけで」
三沢はずっとボールペンを持つ手をとめている。
「クラブ活動とかは。はいっていませんでしたか?」
「個別面談をしたときには、興味をもっていなかったようで。大体、運動も文化活動も全く興味を持っていない連中で」
「担当しているクラスの学生が、ですか?」
「いいえ、全学的に。そもそも、今回、大学院の指導教授の紹介で非常勤になったんですが、都内にある大学にもかかわらず、初めて聞いた大学で」
「わたしも、そうでした」
と三沢が同調する。大田は浅く腰かけている平林の身長を目で測りながら爪を立ててレシートをつまみ上げた。
「参考までに、月曜日の夜8時頃、どちらにいましたか?」
平林の眉がつりあがった。
「失礼な。自宅ですよ」
大田は挨拶もせずに、レジに向かった。
二人は昼食をとったあと、被害者の自宅アパートに再び向かった。やっと電話連絡が取れた。根津駅から近い。発砲スチロールの細長い花壇が並べられた狭い路地の突き当りにその木造アパートはある。しもた屋風の門扉を開けると、長屋のような二階建てのアパートがある。低い灰白色の塀を隔てて、1階の部屋の窓がある。大田が声をかけた。1階右端のドアから無精ひげの男が顔を見せた。
二人は、2DKのダイニングキッチンに通された。天井が低い。
大田が先に口を開いた。
「このたびは、ご愁傷さまで。ご遺体はいまどちらですか?」
「近くの寺だ。明日火葬する。カネがかかる」