「いったん引き揚げるか」
二人は満員電車で、蒲田署に向かった。帰署する前に現場に寄った。
「現場百遍だ」
と大田は左手の土岐の二階事務所を見上げながら言う。一階は零細な印刷屋、印刷屋の手前は居酒屋だ。居酒屋は裏通りと表通りの角にある。居酒屋の裏口が50センチほど裏通りにつき出ている。居酒屋の建物の壁と裏口の間にビール瓶の空きケースがある。
「ちょっと乗ってみい」
と大田が三沢に命じる。三沢はビール瓶のケースに足をかける。足元を確認して両足をのせる。大田が土岐の二階事務所の玄関を指さす。
「鉄階段の2階玄関が良く見えるだろ」
三沢は言われるまま目線を送る。
「あそこで操子が土岐の不在を知って、電話をかけたんですね」
「165センチでも十分見えるだろ。そこのビールの空き瓶で操子の頭頂を一撃」
「でも、当日空き瓶は全部チェックしましたよね。血痕も頭髪もついていなかった」
「5、6本の空きがあったよな」
「凶器は持ち去ったのか」
「元に戻す馬鹿はいないだろう」
署には11時ごろについた。デカ部屋の自分の机につくと三沢はため息をつきながら、
「高橋はアリバイがありますよね」
「いつ調べた?」
「だって、操子が死んだって知らなかった」
「そうゆうのはアリバイってえ言わねえんだ」
「死んでいたと知っていたら注文はださないでしょ」
「ハンドルネーム糸へんの(美紗子)と織田操子が同一人物だとどうしてわかるんだ」
「高橋が最初に絵画を売ったとき、配送先は織田操子になっていたはずです。そのとき、高橋はハンドルネーム『砂』の(美砂子)と織田操子が同一人物であると知る。同時に自宅住所も知る。高橋が先週の月曜日、どこかのニュースで織田操子の殺害を知れば、同一人物が殺害されたことを知るんでは」
「自分が売った糸へんの(美紗子)が『砂』の(美砂子)と同一人物であることは、絵画検索をして知ったはずだ。その時、織田操子と糸へんの(美紗子)と『砂』の(美砂子)が同一人物であることを知ったはずだ。しかし、織田操子が殺害されたことを知っていたかどうか、確認は取れない」
三沢が弥勒菩薩のようにてのひらを頬にあてた。
「高橋が、織田操子と糸へんの美紗子と砂の美砂子が同一人物であると知っていても、織田操子が殺害されたことを知らなければ、一度売った絵画を買い戻したのは偶然ということですか」
二人は満員電車で、蒲田署に向かった。帰署する前に現場に寄った。
「現場百遍だ」
と大田は左手の土岐の二階事務所を見上げながら言う。一階は零細な印刷屋、印刷屋の手前は居酒屋だ。居酒屋は裏通りと表通りの角にある。居酒屋の裏口が50センチほど裏通りにつき出ている。居酒屋の建物の壁と裏口の間にビール瓶の空きケースがある。
「ちょっと乗ってみい」
と大田が三沢に命じる。三沢はビール瓶のケースに足をかける。足元を確認して両足をのせる。大田が土岐の二階事務所の玄関を指さす。
「鉄階段の2階玄関が良く見えるだろ」
三沢は言われるまま目線を送る。
「あそこで操子が土岐の不在を知って、電話をかけたんですね」
「165センチでも十分見えるだろ。そこのビールの空き瓶で操子の頭頂を一撃」
「でも、当日空き瓶は全部チェックしましたよね。血痕も頭髪もついていなかった」
「5、6本の空きがあったよな」
「凶器は持ち去ったのか」
「元に戻す馬鹿はいないだろう」
署には11時ごろについた。デカ部屋の自分の机につくと三沢はため息をつきながら、
「高橋はアリバイがありますよね」
「いつ調べた?」
「だって、操子が死んだって知らなかった」
「そうゆうのはアリバイってえ言わねえんだ」
「死んでいたと知っていたら注文はださないでしょ」
「ハンドルネーム糸へんの(美紗子)と織田操子が同一人物だとどうしてわかるんだ」
「高橋が最初に絵画を売ったとき、配送先は織田操子になっていたはずです。そのとき、高橋はハンドルネーム『砂』の(美砂子)と織田操子が同一人物であると知る。同時に自宅住所も知る。高橋が先週の月曜日、どこかのニュースで織田操子の殺害を知れば、同一人物が殺害されたことを知るんでは」
「自分が売った糸へんの(美紗子)が『砂』の(美砂子)と同一人物であることは、絵画検索をして知ったはずだ。その時、織田操子と糸へんの(美紗子)と『砂』の(美砂子)が同一人物であることを知ったはずだ。しかし、織田操子が殺害されたことを知っていたかどうか、確認は取れない」
三沢が弥勒菩薩のようにてのひらを頬にあてた。
「高橋が、織田操子と糸へんの美紗子と砂の美砂子が同一人物であると知っていても、織田操子が殺害されたことを知らなければ、一度売った絵画を買い戻したのは偶然ということですか」