「初雪だ……」
 隣にたたずむ彼が、ぼそりとつぶやく。
私の目にも、ゆらゆらと白い粒が舞い落ちるのが見えた。
遠くの空は晴れているのに、不思議な景色だった。
 不意に、隣の彼を見やる。
気付けば、小鳥遊公生の瞳から涙が溢れていた。
「大丈夫?」
 そっと背中に手を当てると、彼は嬉し涙だと言った。
辛く悲しい現実が、幾重にも積み重なってきたというのに。
 こんな時間が、いつまでも続いてほしいと私は願ってしまった。
だから再び動き出すことができなくて、私たちはしばらくの間、これまでの思い出に浸ることにした――。