「私には、唯一心の声が聞こえない、真面目で少し近づきずらいオーラを纏う恋人がいた。声が聞こえない理由は分からないけど、やっと落ち着ける場所が見つかったと安心していた。……だけど不思議と考えてしまう。この人に能力のことを話してもいいのか。そしてあわよくば私のことをどう思っているのか知りたい。この時初めて、心の声が聞けたらいいのにって思った。能力のことを話して何か変わるかもという期待と、話したことで今いる場所を失ってしまうかもという恐怖。私は弱いから、後者の結末を選びたくなかった」

 清宮の言葉はどうしても、前には届かず下に落ちてしまう。それは、放つ言葉全てを自分の中に押し込めようとしているからなのかもしれない。

 「自分は普通の人とは違う。普通じゃないことに慣れただけで、強くなったわけじゃない。そんな現実に嫌気がさして、逃げたくて、死に執着して誤魔化していただけなのかもしれない。自身と向き合えなかった自分が、誰かに救いを求めるのは違うのかもしれない……そんな私のこと全てを肯定して欲しいわけじゃない。だけど一緒に悩んで考えて、寄り添ってくれる人がいて欲しかった……私がこの世に存在する意味を教えて欲しかった。……だから、お兄さんが生き続けて欲しいって言ってくれたこと、凄く嬉しかったんだ。本当は出会うはずのない存在なのに、もしかしたら忘れてしまう出会いかもしれないのに、こんなにも心を動かされたのは初めてで……」

 「あぁ。」

 涙声になりながらも必死に紡いだ彼女の言葉は、ちゃんと海堂まで届いていた。