死ぬ前に聞いて欲しい。
 信じるか信じないか、君に任せる。

 
 海堂から話をしてくれると言われ、清宮は体を前のめりにする。


 深呼吸をして、自分を落ち着かせてから海堂は言葉を放った。



 「俺は、未来から来たんだ」


 「……はっ」

 思わず出そうになった声を抑え、清宮は続きをどうぞというように合図を出した。


 「俺は十年先の未来から来た。……その未来で俺は、一度死んでる」


 真面目に話す海堂を笑って茶化せる雰囲気ではなかった。

 清宮はただ相槌を打つ。

 「死んだ後、神と名乗る人に会って、過去の世界で人を救えと言われた。どこの誰とは言われなかったけど、多分君のことだと思う」

 海堂の話を聞いた清宮は表情を歪ませる。

 「その神様に救って欲しいって言われたから、私のこと止めたの?」


 自分の意思ではなく他のものから影響されて生まれた言葉は受け取りたくないと思った清宮。
 しかし海堂が口にした言葉は意外にもあっさりしていた。

 「最初はそのつもりもなかったよ」
 
 「え?」

 正面から飛んでくる言葉に反応して声が零れた。

 
 「その人を救えば生き返らせてやると言われたんだ。君になら分かってもらえるかもしれないけど、自分の意思で一度死んだのに、また生きていくのは辛いだろ」

 そうだね。と清宮が返すと沈黙が流れた。




 「ねぇ、ひとつ聞いていい?」


 「あぁ」


 海堂の声に背中を押された清宮は静かに問う。


 「なんで死んだの?」