「なに? なにかやりたいこと見つかった?」
食い入るように私に詰め寄るから、「そうじゃなくて」苦笑いを浮かべたあと、
「やりたいことは特に思いつかないけど、やり直したいことならあるかな…って」
あの日からずっと、そうだった。
タイムリープできるなら、もう一度過去に戻れるなら、やり直したいって。もう一度やり直して、未来を変えたい。そうしたらきっと、次は望んだ未来が手に入る。次は絶対、失敗しない。
「やり直したいことかあ……」
私の言葉を反芻しながら空を見上げる。
「─あ、ごめん。やりたいこととは違う…よね」
少し身体を縮こめて謝ると、
「ううん、いいよ。俺にもやり直したいことあるからさ」
そう言ったあと、また空を見上げた。
そのときの表情は、笑っているはずなのに笑っていない感じがして。
「……千聖くんも何か後悔してることがあるの?」
──そう、聞かずにはいられなかった。
「さあ、どうかなぁ」
いつもストレートに答えてくれていたのに、千聖くんが言葉を濁すのはこれが初めてだった。
「でもさ、その聞き方だと美月も後悔してることがあるってことになるよ」
鋭い指摘で、私の言葉を詰んだ。「えっと、それは」壊れたロボットのようにベンチから立ち上がったり座ったりを繰り返す私。
究極に追い詰められた。さて、ここからどうしよう。言いたくない。言えない。私の過去なんて誰にも言えない暗黒歴史。
「──なんてね」
困っていると、冗談めいた声が漏れるから、恐る恐る顔をあげると、
「べつに無理やり聞いたりしないから安心してよ」
ポンッと私の頭に大きな手が乗っかった。その瞬間、プシューと音が鳴って、私の身体が思考停止する。