差し出された画面に映っていたのは、私がチケットを譲り受けた人とのトーク画面。
 やり取りはメッセージでチケットも郵送だったから、直接会うことはなかった。だけど、まさか――。

「俺がそのチケット譲ったからね……もう、いつ来てくれるのかと思って、ずっと待ってたんだよ?」

 今一番引っ張りだこの怜也くんのライブは、平日の夜もやっているので週に2.3回やっている。まさか、私の家を出てからずっとチケット用意して待っていたの?
 それで、私がチケットを探し始めたらタイミングを合わせてコンタクトを取ってきた?
 そう考えたら、確かに辻褄が合う。普通ならこんな直前で、こんないい席残っているはずがないから。それも、定価でいいなんてどんなにいい人なのだろうと思っていたけれど、怜也くんが相手だったならいい席が用意できたのも納得できる。
 怜也くんは今日、私が来ていることを知っていて、最後にあの曲を歌ったのだ……。