今までになかった、しんみりした展開でセトリにない進行……。近くのスタッフが慌てているのを見ると、この展開は予定していたものではないのかもしれない。

「俺は嫌われてしまったから、もう、会うことはできないかもしれない。――みんなには、関係ないと伝えたけれど、俺には忘れることができなかった。……これで、俺を嫌いになる人が出たとしても、俺はこの気持ちを大事にしたいと思っています。だから……聞いてください――」

 その後に静かに始まったアコギでの弾き語りバラード。会場全体をレイヤくんが飲み込んでいく。
 怒り出すファンがいるのではないだろうかとも思ったけれど、そんな人はひとりもいなかった。それ以上にみんな聞き入っている。だけど私は、レイヤくんの口から出てくる歌詞に身体が震えた。そして、涙が溢れてきた。
 今日は絶対泣かないと決めたのに……。