なんと、譲ってもらったチケットは神席で、この間ほどとは言わずとも、アリーナ席で前から5列目のど真ん中だった。
 譲ってくれた人はとてもいい人で、仕事で行けなくなってしまい、譲り先を探した直後に私がメッセージを送ったらしい。席も良かったから、倍額以上払うことを予想していたのに、まさかの定価での取引だった。
 私がその人に最高に感謝したのは言うまでもない。――そして、今……最後にするからとステージの上をひたすら見つめていた。
 瞬きするのも勿体なく感じるくらい、熱い視線を送りつづける。
 怜也くんがこのたくさんの観客の中で、私に気づくことはないだろうけれど、この光景を忘れたくないと思った。

「……次でラストの曲です。この曲は今日初めて歌います。……俺には大切な人ができました。だけど、一緒にいることができなくなってしまった……」

 ラストの曲の前に始まった言葉に、私たちファンはただ聞き入っていた。