『広場の隅にいるよ! でもまだファンの人沢山いる』

 普段から絵文字などあまり使わない私のメッセージはとてもシンプルだ。
 きっとまだファンの人がいると分かれば、来るのはもっと後になるだろう。私は、テンションが上がっているファンをのんびり眺めていた。だけどその数分後、座り込んでいる私の前にマスクと帽子を着けたひとりの人影が落ちた。

「あっ、すいません……」

 邪魔になっているのかと、少し場所を移動するために立ち上がろうとした時、その目の前の人が少しマスクを下にずらした。

「さとみさん、俺だよ。待たせてごめんね」

「ふぁ!? ど、どうして!?」

 まだ人が沢山いるのに、そんなに堂々と出てきたらバレちゃうよ!?
 なんと、目の前に来たのは怜也くんだった。まさかの人物に私の方が焦ってしまう。早くこの場を離れないと……! 私なんかといるところは見られない方がいい。

「は、早く行こう!」

 私は怜也くんの手を掴んで、駅に向かって歩き出した。