「もちろん。さとみさんのために用意したからね! ここで歌っても良かったけど、さすがに近所迷惑になっちゃうでしょう?」

 だから、ここでは歌わないとそう言った。
 どうして怜也くんはそんなにかっこいいの……!? 何もかも完璧なのに、その上気遣いまでできるなんて……。
 こんな姿を知ったら、ますます好きになってしまう。私を萌えころす気なのだろうか。

「――全力で……! 全力で楽しませていただきます!」

 私はその場で、チケットを頭より上に掲げて拝みながらそう言った。

「うん。そうしてくれると嬉しいな」

 もう、この短時間でとか、ライブが近いのにどうしてその席のチケットを持っていたのかとか、気になることは沢山あるけれど突っ込まない。聞いたら負けな気がする。
 私は何も知らないふりをして楽しめばいいのだ。
 最悪行けないと思っていたライブに、足を踏み入れることができるのだから、それだけでも満足なのに最高の席を用意してくれたのだから、まさに天にも登る気持ちだ。