「さとみさんにあげる! もしかしてその日のチケットもう持ってた?」

「持ってない!」

 私は絶対に返さないとチケットを胸に抱きしめた。そして、席はどこだろうと確認してみると、思わず絶句した。

「こ、こ、こ、これは……っ!!」

「ん?」

「幻の特等席!? アリーナの1列目の真ん中ど真ん中ってどういうこと!?」

 そう、そのチケットに記されていたのはステージの真正面で1列目の真ん中特等席。一生当たることはないだろうと思っていたその席のチケットが、今私の手の中にある。

「だって、さとみさん目の前で歌ってって言ったでしょう?」

 確かに私はそうお願いしたよ……。だけど、まさかライブの特等席を用意されるなんて思ってもいないじゃないか……。

「言ったけど……貰っていいの?」

 私は手放すつもりはないけれど、一応確認で聞いてみる。私が返すつもりがないことが伝わったのか、怜也くんは笑って頷いた。