赤羽は瀬戸を見ると、クスッと不敵な笑みを浮かべた。
 すると瀬戸はため息を吐くと、タバコの煙りを吐き出した。そしてタバコを捨てると足で踏みつけた。

「しかしあんたも良くやるよな。犯罪だけでは飽きたらず、立花君を使って先輩を殺そうだなんて。もし、あの時に立花君が自殺したらどうする気だったんだ? せっかく捜していた弟を失うところだったんだぞ?」

「フフッ……そうなったら、それまでだったって事だよ。もし仮に自殺したとしてもその程度の人間なんて必要ないだろ? どんな事があっても他人のせいにして生きることに執着する人間こそ赤薔薇会に相応しい。君ならその気持ちが分かるだろう? 瀬戸嵐君」

「馬鹿を言え。俺は人のせいにしてまで、生きるのに執着している訳じゃない。俺があんたに協力するのは、たくさんのミステリーを間近で体験出来ると聞いたからだ。別に仲間に入った訳じゃない」

「あぁ……そうだったね。君はミステリーものなら、主人公の探偵や刑事より犯人に推ししているぐらいの犯罪マニアだったね」

 赤羽は、見透かしたようにクスクスと笑う。それを聞いていた瀬戸は、不服そうに舌打ちをする。

「その辺の犯罪マニアと一緒にするな。俺は犯罪こそが、美学だと思っている。犯罪がないと、警察も探偵も輝けない。それこそ邪魔なぐらいだ。俺は、ただ純粋な気持ちで犯罪に関わり、そのあり方を楽しみたいだけだ。そのために警察に入ったのに……」

 そう……瀬戸嵐は、犯罪マニアだった。
 あらゆる犯罪をリスペクトしており、その中でも赤薔薇会の犯罪に興味を抱いていた。鮮やかな手口に残忍な殺し方。
 その光景に心を奪われ、手を貸していた。
 他にも理由があるらしいのだが、それはまだ謎のままだった。

 「それに……あの子が神崎君を撃てないことぐらい分かり切っていた。殺人の英才教育を受けてきた僕と違い、あの子は何も知らない普通の子だ。だから少しずつ内側から飼い慣らさないといけない。それにどちらにしろ、神崎君にはダメージが大きい。伊波君の時だってそうだ。実の弟を失い、絶望していた時に華の雫で錯乱させた。そして命令に背く程度に量を調整させて自殺するように仕向けた。大切な幼なじみである彼を守るために死を選ぶようにね」

「鬼畜だな……あんた」

「お褒めの言葉ありがとう。さぁ、楽しみだ。彼らは、一体どうやって僕に立ち向かい、そして協力するのか。フフッ……」

 赤羽は、楽しそうに笑う。
それは、終わりではなく始まりの瞬間だった……。