赤羽も神崎さんも血を吐くと踞り倒れた。その衝撃で靄が晴れ意識がハッキリとする。俺は、慌てて神崎さんのところに駆け寄った。
 今度は、思ったより身体が動かせる。どうやらショックでトランス状態から抜け出せたようだ。いや……そんなことよりも。
 神崎さんを抱きかかえながら必死に呼びかける。

「神崎さん。しっかりして下さい」

 早く……救急車を呼ばないと。
 慌ててPCウォッチに呼びかけようとしたら、スーツの男達は神崎さんと俺に拳銃を向けてきた。
 絶体絶命のピンチになる。もうダメだ……そう思った瞬間だった。
パトカーのサイレンが聞こえてくる。何台のパトカーがこちらに向かってきた。
 1台の車から瀬戸さんの声が聞こえてくる。

『赤薔薇会、そこまでだ。無駄な抵抗はやめて武器を捨てるんだ』

 どうやら神崎さんの指示で動いてくれたようだ。
 良かった……本当に。これで……神崎さんを助けられる。
 俺のせいで死なせるところだった。それでも神崎さんを撃ったのは俺だけど……。

 涙で視界がぼやけてきた。それに何だか頭がフラフラする。
 薬のせいか、助かってホッとしたのか分からない。俺は、そのまま意識を手放してしまう。
 何処からか声が聞こえてきたが、意識が朦朧とするして届かなかった。
だが、その現場は最悪なものになっていた。
 神崎さんと俺は救急車で、運ばれることに。
 赤羽も銃で撃たれたということで、とりあえず別の救急車に運ばれる事になっていた。瀬戸さんは、赤羽の方の救急車に付き添うように後ろから追いかける。

 しかし走行中に、突然赤羽が目を覚まし、一瞬で救急車の中を血の海に染まった。
 救急隊の人を切りつけると、運転手を脅し山道に移動させる。そして全員の息の根を止めた。
 あっという間に血で塗られ、そばには死体が転がっていた。
 赤羽は、自分のPCウォッチを使い、仲間に連絡。迎えに来させる。
 瀬戸さんは車から降りると、黙ったままタバコを吸い始めた。

「これで良し。ふぅ~防犯チョッキを着ていて血のりを使ったにしても、2発も撃つなんて。なかなか酷いよね……神崎君は。それよりも君もご苦労だったね? 瀬戸君」