そうだよな。俺……何もない凡人なんだから。
 瀬戸さんみたいに刑事じゃないし、リカコさんみたいに情報通でもない。
 何よりも神崎さんは、俺を通して伊波さんを見ていた。俺のことなんて……結局何も見てなかったんだ。

 ずっと引っかかっていた言葉がようやく理解する。
 俺は、ずっと見てほしかったんだ。誰でもない自分自身を……。
 親に愛されず、施設育ちだった。ずっと寂しい思いをしてきた。
だから嬉しかった。こんな俺でも受け入れて一緒に居られることが……。
 でも違った。神崎さんは……ただ俺を使い、復讐をしたいだけだったんだ。

 その事に気づかされると涙が溢れていた。これは、悲しみの涙だ。
 しかし、だからと言って神崎さんのところに戻れない。赤羽に従いとも思わなかった。何よりこの血を残しておきたくない。
 まだ意識が残っている。利用されるぐらいなら……。
 俺は、残った意識を必死に保ちながら拳銃の引き金を引くと、腕を挙げる。そして銃口を自分の頭に向けた。手はガタガタと震えている。

「立花。お前、何をする気だ!? 馬鹿な事はやめろ」

 神崎さんは大声で叫んでとめようとしていた。だが、俺はやめるつもりはない。
 俺は神崎さんを撃つことなんて出来ない。
 だからせめて、自分で命を絶つことで守りたかった。唯一、俺が出来る事だったから……ごめんなさい。
 自分に向けて撃とうとした。しかしその時だった。
 神崎さんは自分の身がどうなろうが構わずに、俺のところに飛び出してきた。

 俺は、神崎さんに抱き締められる。バンッと撃つ衝撃を残し……。
 神崎さんは俺の命を助けてくれた。しかし、いきなり飛び出してきたので、左肩が拳銃の弾に当たり血を流していた。

「……かん……ざき……さん?」

 俺は驚きとショックで、頭が真っ白に拳銃をなり地面に落とした。すると神崎さんは左肩から血を流した状態で、落とした拳銃を慌てて拾う。
 そして、その状態で赤羽に向かって何発か撃ち返した。赤羽は、思わない反撃に遭い抵抗が出来なかった。

「うぐっ……驚いたなぁ……神崎君」

「道連れだ……ゴホッ……」