PCウォッチを見ながら考えていると、伊波君は何を思ったのか

「ねぇ、さっきから不思議に思っていたんだけどさ。何故この場に神崎さんが現れないんだろうね?」と呟いてきた。

「神崎さんが?」

「……うん。不思議だと思わない? さっきから調べているのは僕達だけじゃないか。いつもなら、こういう勘は神崎さんの方が得意なのに」

「えっ……?」

 確かに言われてみれば、こういう現場調査をもっとも得意とするには神崎さんだ。
 赤薔薇会が絡んでいるとしたら、すぐに駆け付けるはず。どうして姿を見せないのだろう?


 するとその時だった。黒いリムジンが、こちらに向かって突っ込んできた。
 そして俺のところで停まると、黒いスーツ姿と黒い眼鏡をかけた大柄な男が数・人降りてきた。えぇっ……ちょっと!?
 その男達は、俺を捕まえると強引に車の中に引きずり込もうとしてきた。

「ちょっ……やめろ!? い、伊波君!!」

 必死に抵抗しながら彼を見る。しかし伊波君はクスッと不敵な笑みを溢すと、満足に俺を見ていた。えっ……?
 俺は、大柄な男達に勝てる訳でもなく、そのまま黒いリムジンに詰め込まれる。
そして一瞬の内に攫われてしまった。

 それからどうなったのかは分からない。
 変な注射を打たれたかと思ったら意識が朦朧となり、気づいた頃には微かに海の音とエンジン音が聞こえきた。ここは……何処だ? 車の中か?
 うっ……身体が痺れて上手く動かせない。意識もぼんやりする。
 必死に重たいまぶたを開けて周りを見ようとした。するとクスクスと笑い声が聞こえてきた。

「目が覚めたかい? 立花君」

 えっ……この声は!?

 顔を上げて見てみると、その声の人物に衝撃を受ける。何で伊波君が!?
 リムジンなのでお互いに向かい合うように座るようになっていた。真ん中に長方形のテーブル。座席は黒いソファーに広い車内。
 彼は、向かい側の席に座りながら足を組み、不敵な笑みを浮かべながら赤ワインを飲んでいた。