『僕もそれを観て驚いちゃってさ。立花君ところは、大丈夫? 神崎さんとか
その調査とかしそうだから心配になって電話してみたんだけど』

「あっ……それなんだけど」

 俺は、伊波君にクビになったことを話した。自分が巻き込まれないようにワザと避けられて今、何処に居るか分からないことも。
 すると伊波君は、申し訳なさそうに謝罪してくる。

『そっか……ごめん。そんな事も知らずに話題に出して。でも神崎さんらしいな。
昔から優しい人だったからさ。でもさ……このままにしていたらダメだと思うんだ。
神崎さんは兄のことを大切に想ってくれてるけど、そのせいで前に進めなくなっている。このまま放っておいたら神崎さんは、これから先もずっと苦しみ……兄のようにならないか心配だ』

 その言葉に思わず自殺をしないか不安になってきた。
 そんなの嫌だよ……神崎さんが死ぬなんて。考えるほど悪い方向に考えてしまい、気が沈む。どうしたらいいんだ?
 すると伊波君がこんなことを口に出してきた。

『今日電話して良かった。あのさ、僕達だけで犯人を見つけることって出来ないかな?』

「えっ? どういうこと?」

『僕達だけで犯人を見つけて警察に通報したらいいんだよ。僕も兄のことで傷つく神崎さんを見たくない。このままだと兄も浮かばれないと思う。二人で犯人を見つけるきっかけを作ったら神崎さんも立花君を見直すと思うし、犯人が何か自供すれば、赤薔薇会を捕まえることも出来ると思うんだ。何より前を向いてもらうきっかけになるはずだよ』

 精一杯力説する伊波君を見て俺は、驚きつつも納得させられた。確かにそうだ。
 俺達が先に見つけられたらきっと神崎さんは、俺のことを見直してくれるかも。
 それに前を向くきっかけになってくれたら嬉しい。

「うん、そうだね。俺達で見つけよう!」

 俺は、伊波君の言葉に同意した。そうだ。俺達が先に見つけてやればいい……。
 お陰でやる気が出てきた。
 そして伊波君の提案に乗りテレビ電話を切ると急いで荷物をカバンに詰め込んだ。
 俺と伊波君は、ある場所に向かうことにした。向かう先は、大阪。