それを見て俺は、どうしようもない恐怖と不安が込み上げてきた。赤薔薇会の冷酷な一面を再確認されられるようだった。

 その後。もう一度瀬戸さんにテレビ電話をすると今度は、出てくれた。
 やっぱりバイクを追いかけて奮闘していたらしい。事情を話すとパトカーを何台も連れて駆けつけてくれた。

「すみません。気づくのが遅れて。大丈夫でしたか? 怪我はないですか!?」

「……大丈夫だ。それよりバイクは、結局逃したんだろ?」

「そうなんッスよ! 必死に追いかけたのに途中で細い道に逃げ込まれてしまって。もうそこら中を捜して、上司に怒鳴られるし散々な目に遭いました」

 トホホとした表情をする瀬戸さんに俺は、苦笑いする。
 すると神崎さんは、ため息を吐いた。本来ならいつのも光景だ。なのに、何故だろうか? いつもと違うように感じる。気のせいだろうか?
 心配そうに見ていると神崎さんは、止めてあったバイクを取りに向かう。
 そしてエンジンをかけると俺に向かってヘルメットを投げてきた。

「立花。乗れ……送っていく」

「は、はい」

 すると早々と帰ろうとするので瀬戸さんが慌てて止めてきた。

「ちょっと待って下さい。まだ事情を詳しく聞かないといけないし、勝手に帰られたら困ります」

「立花も疲れているから明日にしろ。別に明日でもいいだろ? 店も知っているんだし」

「そうですけど……」

「立花早く乗れ。とにかく俺も疲れた。二階堂ユミカが起きたら俺にも教えろ。じゃあな」

 神崎さんは、そう言うと俺が乗ったのを確認すると、そのまま走って行ってしまった。俺もその時は、神崎さんも疲れているのだと思っていた。

 しかし、自分の住んでいるアパートに着くのだが、去る間際に神崎さんは衝撃なことを言われる。

 「立花。お前は、今日からクビだ。明日からお店には来なくてもいい」と。

 えっ……何で?