しかしお面の男……赤羽は、気にする事なくクスッと笑う。

『いや……間違えてはいない。二階堂ユミカの後始末をしないといけないと思った時に思い付いたんだ。楽しいパフォーマンスとしてね。ユミカ。『アロマだ』目の前に居る神崎桃哉を殺せ!』

 えっ……? すると二階堂ユミカは、徐に下に置いてある金属パイプを握りこちらを見てきた。あれは、トランス状態!?
 目線が明らかに虚ろで田辺さんの時と同じだ。まさか彼女まで『華の雫』を摂取していたと言うのか?

「死ね。神崎桃哉」

 麻薬で操られた二階堂ユミカは、神崎さんに向かって金属パイプで殴ろうとしてきた。

「神崎さん。危ない!!」

 俺は、思わず叫んでしまった。だが神崎さんは上手く避けてくれたが、俺の声に驚いて振り返る。

『立花。外に居ろって言っただろ!?」

「すみません。どうしても気になって……あ、神崎さん!!」

 俺と話している間にも二階堂ユミカは、狂ったように神崎さんを攻撃しようとしてきた。金属パイプを思いっきり上から振り下ろしてくる。
 危ない!! そう思ったが危機一髪避けてくれた。
  しかしホッとする間もなく神崎さんに向かって行く。拳銃を持っているが、一般人の二階堂ユミカに撃つ訳にはいかない。

 万が一当たってしまったら大問題になりかねない。何とかしないと……。
 俺は、必死に頭をねじり考える。そ、そうだ!
それでいいか分からないけど、一か八かだ。俺は、無我夢中で叫ぶ。

「ユミカ『アロマ』だ。眠れ!」

 すると二階堂ユミカは、ピタッと動きが止まると、そのまま倒れてしまった。
あ、当たった……。
 俺は、驚きとホッとして座り込んでしまった。良かった……田辺さんと同じキーワードで。緊張で変な汗がでてしまった。
 そうしたら赤羽は、アハハッと笑うと大きな拍手をする。

「アハハッ……よく気づいたね? そう……『華の雫』は、キーワードを言えば誰でも止められる。別に僕の声だけが反応する訳ではない。神崎君は、どうやら俺だけだと思い込んで考えなかったのかな? 君の相棒は、なかなかの優秀なんだね」