だとしたらどうしたらいいのだろうか?
 中には、入りたくない。しかし神崎さんを一人で行かせるのは気が引けるし……。
 俺は、周りをキョロキョロと見る。すると鉄パイプを見つけたので、それを持つと恐る恐る中に入って行く。震える気持ちを抑えながら。
 何とかして神崎さんの役に立ちたい。無理だと分かっていても大人しく待っていることが出来なかった。中に入ると確かに静かだった。あれ?
 悲鳴が聞こえたはずなのに……。

 隠れて様子を伺う神崎さんが見える。その奥を見ると二階堂ユミカが立っていた。
 足元には、あの大金が入ったカバンと金属パイプが、そばに置いてあった。無事だったんだ……良かった。
 そう思い近づこうとする。するとその瞬間だった。
 倉庫の壁にPCプロジェクターの大きな画面が出てきた。その画面がつくと、目と鼻のところまで隠れたキツネのお面を付けた人物が映った。
 誰だ……見た感じだと男性っぽいが?
するとそのお面の人物は喋りだした。クスッと不敵な笑みを浮かべながら。

『やぁ神崎君。そこに隠れているんだろう? 出ておいでよ。久しぶりに君と話がしたい』

 声は、機械音になっていた。それよりも、このお面の人物は、神崎さんのことを知っているのか? しかもここに居ることさえも……。
 神崎さんは、拳銃を構えたままに出てきた。神崎さん!? 大丈夫なんですか。
 俺は、心配になりながらその現場を見ていた。

「久しぶりだな。赤羽。やはりこれも仕掛けだったか、俺を誘き寄せるための罠だったんだな」

 赤薔薇会!? じゃあ……このお面の男は、赤薔薇会のボスなんだ?
 思わない再会に俺は、緊張で唾を呑み込んでしまった。お互いに緊迫した空気が流れていた。

『誘き寄せる? ただの偶然さ。僕は、ボスとして彼女の失態を償わせようとした。
そうしたら、たまたま君らが来ただけだろ?』

「嘘つけ。なら何で誘拐までして金を請求した!? そうすれば俺のところに依頼が来ると思ったからだろう。全てお前が陰で企んでいたことだ」

 冷静沈着な神崎さんだと思えないぐらいに感情を剥き出しにして歯を食いしばっていた。