すると深く深呼吸をしてテレビ電話に出てくれた。

「はい。二階堂ですが……」

『母親か。お金の準備は、出来たのか? 警察には言っていないな?』

「えぇ。お金の準備は、出来たし警察には言っていないわ。 あの……娘は、無事なんですか? 声だけでも聞かせて下さい」

 神崎さんは、すぐさま盗聴に入る。小型版のPCプロジェクター『ZEDSS』これは、ノートパソコンの進化版と言われている。
 インカムで犯人の声を聞きながら神崎さんは、ポログラフのキーボードで打ちながら居場所を追跡していた。

 テレビ電話だが壁しか映ってないし顔もお面を被って音声も変えていた。追跡できないようにしているのだろう。
 俺は、他に何か手がかりがないかと耳を澄ませると、微かだが遠くから電車の音が聞こえてきた。電車の近くに拉致されているのだろうか?

『ならいい。受け渡しの指示を出す。まず家族の誰かに指定した手さげカバンに金を詰めて明日の13時に台東区にある隅田公園に来い。いいか? 1人で来い。また連絡をする』

 それだけ言うと一方的に電話を切られてしまった。
 隅田公園に明日の13時か……その時間は、人が多いだろう。人混みに紛れるつもりか?

「あの……犯人は、そう言ってますけど」

「大丈夫ですよ。俺達が一緒に居ますから」

 俺は、安心するようにニコッと笑ってみせた。すると神崎さんは、インカムを取ってため息を吐いた。

『電話が短くて細かくは、無理だったが電車が近くにある東京区域内で間違いないようだ。とにかく、また連絡があるかもしれないし待とう」

「はい」

 しかしその言葉に対して二階堂ユミカの祖父は、激怒してきた。

「何をしているんだ? 居場所の指示を出してきたんだろ? なら早く捕まえろ。金ならワシが持って行く。今から張り込んでユミカを取り戻せばいい」

 興奮気味にそう言って騒ぎ立てる。そう言われても……。

「お、落ち着いて下さい。まだ次の指示が出ていないので待っていて下さい」

「これが落ち着いていられるか!? 孫が……ワシの可愛い孫のユミカが殺されるかも知れないのだぞ? やはり探偵は、信用ならん。警察も何故どうしようもない探偵を寄越すんだ? 犯罪を見す見す逃してばかりだし、どうしようもならん」