「立花、来い。追いかけるぞ」

「えっ? でも……」

「コイツのことは心配いらない。リカコさんよろしくお願いします」

 神崎さんは、リカコさんに頼んだ。えっ?
 するとリカコさんは、拳を構える。そして田辺さんに向かって行く。
 危ないですよ!? と思ったがリカコさんは、ハサミを振り回す田辺さんを避けながら至近距離になると、強力な拳を彼の頬を目掛けて殴った。

「オネエを舐めんじゃねぇー!!」

 野太い低い声と一緒に殴った威力は、ボクシング並みだった。
 田辺さんは、吹き飛ばされそのまま倒れてしまった。ま、マジっすか!?
 リカコさんの人間離れした腕力に啞然とする。

「ほら立花。行くぞ!」

 しかし神崎さんは、表情一つ変えずに俺に行くぞと言ってきた。俺は、ワケが分からなかったが言われるがまま控え室から出て二階堂ユミカを追いかけた。
 二階堂ユミカを追いかけるとエレベーターにギリギリ入り込むと、下に下りてしまった。しまった……逃げられた!?

「立花、階段を使うぞ。このまま一階に下りてみろ、赤薔薇会に始末されるかもしれない」

「は、はい」

 俺と神崎さんは、慌てて階段の方に向かい下に下りる。確かに、失敗をしたのなら赤薔薇会が黙ってはいない。
 始末される可能性が高い。なら早く捕まえないと……。
 そう思うのだが、リカコさんの迫力が気になってしまう。あの後大丈夫だったのかな?

「あ、あの……リカコさんって何で、あんなに強いのですか?」

「あっ? あぁ……リカコさんは、学生の頃にキックボクシングをやっていたからな。しかも日本チャンピオンだったとか」

 キックボクシングの日本チャンピオン!? あのリカコさんが?
いや……確かに体格的には、ぴったりかもしれないが。

「将来を期待されていたみたいだが本人は、男性よりも女性に憧れていたし。ヘアーメイクの方に興味があったらしく途中で辞めちゃったと聞いている」

 へぇ~才能と興味が違ったのかな? いや。でもヘアーメイクとしても有名だし
 他にも情報屋としての腕も有名みたいだから色々才能を持った人なのだろう。
 しかしそこから、どうやって情報屋になったのだろうか?
 神崎さんと同じで、リカコさんもミステリアスな人だなと思った。
だが気になったのは、途中までだ。その間に二階堂ユミカは、一階まで下りてしまっていた。

「あの男……なんて役立たずなのよ。これじゃあ、計画が台無しだわ」

 息を切らしながらPCウォッチを使いテレビ電話をする。

「赤根さん。助けて下さい!」

『話は、大体聞いている。大変だったね? すぐ地下の駐車場に移動するんだ。
そこに仲間を呼んであるから』

「本当ですか!?」

『ああ、後の事は僕に任せておけばいい』

 二階堂ユミカは、慌ててテレビ電話を切ると地下の駐車場に向かう。
 薄暗くなっている地下駐車場に行き慌てて捜した。だが、その瞬間。見知らぬ男に背後から襲われてると、そのまま車に押し込められ連れ去られてしまった。それは、一瞬の事だった。

 俺達が追いついた頃には、行方不明になってしまった。
 結局怪しい車が目撃されただけで、その行方も見つからず。
二階堂ユミカは、組織と、どう関り合いがあったのか分からないままに。
 しかしそれが新たな事件の幕開けとなった……。