田辺さんは、自白したが二階堂ユミカは、何も知らないと言い出した。
 これだと脅迫状を出しただけで二階堂さんが殺した証拠にはならない。確かに、それだと田辺さんだけがやったとも言えるし……。

「……実際にそうでしょうか? 伊藤さんは『華の雫』を摂取させられていました。その薬は、新種の麻薬です。相手をトランス状態にさせて思い通りに動かせることが出来る特殊なやつですが、まだ世間の一部しか出回っていません。しかしあなたは、その扱い方を知っていた。それは、アロマの中身を知っていた人物だということになります。それと赤薔薇会は、慎重だから痕跡は、全てデータを一切残らないように消している。しかし、あなたと田辺さんとのやり取りはないかと探してみたら見つかりましたよ。あなたは、お互いに消したつもりでも田辺さんのPCウォッチからあなたがアロマを置くように指示を出したことや脅迫状のことまでデータを復元出来ました。知らないなら、そのアロマは、何処で手に入れたのですか?」

 彼女を追い詰める神崎さん。二階堂ユミカは、言葉を詰まらせ黙っていた。
 しかしフフッと突然笑い出した。

「田辺さん……『愛してる』わ」

 えっ? すると田辺さんが硬直したように動かなくなった。目が虚ろになっている。ま、まさか!?

「チッ……やはり田辺さんにも使っていたか。『華の雫』を」

 神崎さんが舌打ちをしながらそう言った。やっぱり!?
しかし二階堂ユミカは、勝ち誇ったようにニヤリと笑い出した。

「バレてしまったのなら、もういいわ。いざっとなったらお祖父様やあの方の力を借りて無罪にしてもらうから。これは、この男による犯行よ。田辺さん。私が逃げるまでアイツらの足止めをしておいて。何なら殺してもいいわ」

 彼女が命令をするとトランス状態になった田辺さんは、ヨロヨロとしながらも近くにあった椅子を掴む。
 まさかエレナちゃんと同様に今度は、田辺さんが暴れ出した。
 ど、どうしようと思った時にはもう遅い。椅子を投げてきた。悲鳴が飛ぶ。
 そしてハサミを見つけるとこちらを睨み付けてきた。

 ちょっと……凶器は、反則だぞ!?
 その間に二階堂ユミカは、隙を見て控え室から出て行ってしまう。捕まえないと。だが田辺さんが……。