……その時だった。

「そこまでだ。犯人は、田辺さんじゃないよ」

 えっ? と驚いて声をする方を見ると神崎さんが入ってきた。
 えっ……えぇっ!? 犯人が田辺さんじゃないってどういうことだよ?
 俺は、唖然とすると神崎さんは、クスッと不敵な笑みを浮かべる。

「ど、どういうことですか? 犯人は田辺さんのはずでは?」

「田辺さんは、共犯にされただけだ。伊藤さんを殺した犯人じゃない。おかしいと思ったんですよ。赤薔薇会が絡んでいるはずなのに、やけに簡単に犯人を割り出せたな……って。だから、もう一度アリバイを整理してみた。すると他に電話をかけた人物が、この中に居るなって気づきました。あなたですよね? 犯人は……二階堂ユミカさん」

 神崎さんの言葉にまた驚かされた。確かにアリバイで電話をしたと言っていた。
 しかし、だからと言って何故彼女が犯人なんだ?

「ちょっと変なことを言わないでよ。私は犯人じゃない。伊藤さんのは、自殺だったんでしょ? 何で私が殺さないといけないのよ」

 あれ……? そういえばさっきも同じことを言っていた。
 おかしくないか? だって……それは。

「何故知っているんですか? 彼が自殺だって? 一般から見たら他殺しか見えないし、彼が自殺だと認定されたのは、昨日です。まだ報道しないように口止めまでしておいたのに」

「そ、それは……偶然警察の人達の話し声を聞いて」

 神崎さんの発言に対して必死に言い訳をしようとする二階堂ユミカ。

「それだけではない。あなたは、田辺さんにいいように言って罪を擦りつけるために手伝わせた。そうだなぁ……アロマを使い、伊藤さんの気を引いている間に脅迫文の下書きを隠すようにとでも言ったのでしょう。違いますか? 田辺さん」

 チラッと神崎さんは、田辺さんを見る。すると驚いていた彼だったが、一瞬で顔を赤くさせて怒り出す。

「ど、どういうことだよ? ユミカちゃん。俺は、アロマを焚いている間に手紙を隠せって言ったじゃないか!? ちょっとムカつくから、それで怖がらせてやろうって。そうしたら一緒に食事をしてくれるって……」

「ちょっと変な言いがかりつけないでよ!? 私、そんなの頼んでないし。それなら田辺さんにも犯行が可能性じゃない。だ、大体それなら伊藤さんが自殺したことで間違いないのでしょ? なら私は関係ないじゃない」