『例えば……そうね。立花ちゃんが薬を飲まされたとするわね? そしてトランス状態……睡眠状態になった所にキーワード。『アマチュア』という言葉を覚えさせる。しばらく経つと元に戻るけど立花ちゃんには、すでに『アマチュア』というキーワードを出せば、いつでもトランス状態にさせる事が可能になったわ。のちにそのキーワードを使い立花ちゃんをトランス状態にさせた後にあなたに悪さしたり、自殺しろと指示を出せばその通りにやらせる事が出来るって訳よ。後で気づいたとしても後の祭りだしね』

 はぁっ? だとしたら……それって恐ろしい麻薬じゃないか!?
そんな事って、本当に可能なのだろうか? 
信じられないと思いながらも、それだとしたら伊藤さんも……それで?

「じゃあ伊藤さんもそれで殺されたんですか?」

『まぁ……そうなるでしょうね。私も警察に入り込み、調べてみたら彼の体内からその成分が発見されたわ。花の香りがするらしいし他のデータと比べても、それで間違いなさそうね』

 じゃあ……やっぱり他殺だったんだ!? 良かった……自殺なんてする訳がないと思っていたし。だったらストーカー説も嘘になる。
 そうなればエレナちゃんにも報告が出来るぞ。

「じゃあ早速瀬戸さんに伝えましょうよ? これは、自殺じゃなくて他殺だって。そうしたら調べ直してくれますよ!」

「待て立花。それは、まだダメだ。確かに他殺になったが、犯人が見つかっていない。それに『華の雫』は、赤薔薇会が開発した薬だ。また世にも出ていない薬でもあるから、下手に警察に言えば情報が漏れて犯人まで消される可能性もある。とにかく自殺にしろ他殺しろギリギリまで黙っておいた方がいい……報道にもだ」

「えっ……赤薔薇会が!?」

 ここにも赤薔薇会が潜んでいたのか?
 犯罪には、必ず絡んでいる組織に俺は、複雑な気持ちになった。正直怖いとも思った。

『あの銀行強盗の一人も『華の雫』が絡んでいたそうよ? だから電話に出た直後犯人がおかしくなったのね』

「なるほどな。それだと辻褄が合う。つまり俺らは、まんまと手のひらで転がされていたって訳だ」