「いや……他殺にしては、不自然だ!」

「な、何でですか!?」

 神崎さんに逆のことを言われて驚いた。何でだよ? 自殺の方が不自然じゃないか……。すると神崎さんは、調理用の包丁を握った。

「いいか? もし他殺で相手に刃物を向けて刺すとする。そうなった場合は、こうやって刃の向きを下にするだろ? だが伊藤さんに刺さったナイフは、上向きだった。つまり自分からナイフを下ろすようにして腹部を刺したってことになる」

 刺す真似をして教えてくれたが確かに、自分で刺すにしても刃物を下向きにして刺すのは、難しい。えっ? じゃあ……やっぱり。
 伊藤さんは、自殺したってことになるのか?
 俺は、信じたくないと思った。だが、他に他殺としての証拠もないし……このままだと本当に伊藤さんがストーカーをして自殺をしたことにされてしまう。

「じゃあ、証言の清掃中の看板は?」

「それも調べたよ。すると清掃スタッフのモノだった。でも別の犯人の指紋は出て来なかったし、伊藤さんの指紋が発見された。多分自分で置いたんじゃないかな。発見を遅らすために」

 な、何だよ……それ。ど、どうしよう……。
 思いがけない真実に俺は、動揺を隠せなかった。何も証明されない。本当にそうなのか? エレナちゃんに何て言ったらいいんだ……。
 すると神崎さんのPCウォッチが突然反応する。

「瀬戸。悪いが店じまいにする。今から新たな依頼者が来るから」

「えっ? そうなんですか?」

 瀬戸さんは、驚くも残念そうに食べかけのサーモンサンドを食べると店から出て行った。依頼者って今から? 今依頼があったのだろうか?
 すると神崎さんは、入り口の札を裏にして鍵をかけると奥の休憩室の方に向かって行く。あれ? ここじゃあ?
 俺も慌ててついて行くと物置きの方に向かっていく。えっ? もしかして隠し部屋で!?

 不思議がっていると神崎さんは、気にすることなく開けると階段を下りて行く。階段を全て下り終わると扉がある。鍵を開けると中に入り電気をつけた。
 そして神崎さんは、チェアーに座るとプロジェクターが反応して起動を始めた。
 ポログラフのキーボードが出現すると神崎さんは、そのキーボードで何かを打ち始めた。ポログラフのキーボードの壁は、プロジェクターに反応して画面に変わる。