凄いとは思う。思うのだが……。

「まぁ照れちゃって。可愛いわ~食べちゃいたいぐらい」

 そう言いながら投げキスをしてきた。ゾゾッと背筋が凍ったような感覚がした。
 ま、まさか嫌な予感ってこの事だろうか? 確かに恐怖だけど……。
 神崎さんもそれを見て苦笑いしていた。

「リカコさん。あまり立花を困らさないでくれよ? それよりも上手く潜らせてくれてありがとう」

「あら困らせてないわよ? 失礼しちゃう。フフッ……神崎ちゃんの頼みだもの。断れないわよ。それに実物の立花ちゃんにも会ってみたかったし。なるほどね。何となく伊波ちゃんに似ているわね」

 えっ……伊波さん!?
 その言葉に一瞬心臓がドキッと高鳴った。リカコさんは、伊波さんを知っているのか?

「そんなことよりも、そろそろ行くぞ。撮影前に辻エレナさんとマネージャーの伊藤さんに会っておきたいからな」

「フフッ……そうね。私も仕事しなくちゃあ」

 話を遮るように神崎さんがそう言ってきた。思い出したくないのか話を逸らされたように気がした。やっぱり今も思い出したくないのかな?
 俺が伊波さんの弟と会っていると知ったら、どんな反応をするのだろうか?
 そう考えるとまた複雑な罪悪感を抱いた。
そして俺と神崎さんは、リカコさんと一緒に辻エレナの控え室に向かった。
 ちなみに神崎さんは、モデルのふりをするらしい。あのルックスなら通用するだろう。ちょっと羨ましいと思った。

 控え室に着くとリカコさんは、いつものようにノックをして部屋に入っていく。
 俺らも中に入れてもらう。うわぁーすげぇ本物だ!!
生の辻エレナは、めちゃくちゃ可愛かった。顔小さい。それに目がぱっちりしていて色白。ふわふわした明るい茶髪で華奢な身体なのに手足も長い。
 さすが人気モデル……大学に居る女子と比べても飛び抜けて可愛いと思う。

「ハーイ。エレナちゃん。今日は、あなたが頼んだ探偵を連れてきたわよ」
 簡単に正体を明かすリカコさんだが、事前に伊藤さんにも許可をもらっているので問題はない。するとそれを聞いた辻エレナは、目をキラキラと輝かせながら近づき俺の手を握ってきた。