神崎さんに泣きつきながら言ってくる人物は、捜査一課の刑事で瀬戸嵐さんだ。短髪で背が高く大柄の体育系。
何故、神崎さんを先輩と呼び助けを求めるかは理由がある。
「問題に答えない奴は、入れる気はないぞ。それに愚痴やタダ働きならしないぞ?」
「そんなこと言わないで下さいよ。先輩と後輩の仲じゃないッスか」
「昔の話だろうが……まったく」
呆れたようにため息を吐く神崎さんを見て苦笑いする。
俺も最初聞いて驚いたが実は、神埼さんは、元刑事だった。
どうして辞めたかは知らないが瀬戸さんとは、その時の後輩だったらしい。
そして辞めた後は喫茶店を始めながら、もう一つの副業として探偵事務所を経営していた。
事務所は、この喫茶店。依頼があれば、お店を休んでその調査に向かう。だから気まぐれに休業とか、開店の時間帯が短く微妙なのは、依頼を優先するためらしい。
しかし問題なのは、それだけじゃない。何故なら。
「で、でも先輩も興味を持つはずです。何故ならそこに赤薔薇会が潜んでいる可能性があるので」
「赤薔薇……だと?」
その言葉にピクッと反応し、眉間にシワを寄せる神崎さん。赤薔薇会だって?
今、刑事が追っている犯罪組織の名だ。一般には広まっていないものの警察の間では、犯罪トップクラスに君臨している闇組織。
『どの犯罪にも赤薔薇の影あり』なんて言われているほど、その組織の存在は大きく、いろんな犯罪に内通していた。
そして、その組織に神崎さんには深く関わろうとしている。
「瀬戸。とりあえず座れ。話は後で聞く」
「は、はい。あ、先輩。俺もサーモンサンドが食べたいッス」
「調子に乗るな」
神埼さんにツッコミを入れられる。でも結局サーモンサンドを作ってもらっていたが。
しばらくして残りの客が帰ると俺は、ドアにかけてある営業中の看板を裏返しにして閉店にした。まだ始まって一時間ぐらいしか経っていないのに。
瀬戸さんは、サーモンサンドを食べ終わるとコーヒーをおかわりしていた。そして改めて本題である話を始めた。