すると神崎さんは、俺にコソッと話しかけてきた。

「立花。隙を見て何でもいい……数秒でも相手の気を逸らせろ。その間に俺が何とかする」

「えっ? あ、はい」

 何が何だか分からないけど、とにかく神崎さんの言う通りにする。俺は、近くにあった他人の雑誌を丸めて犯人目掛けて投げた。
 もう……半分やけくそだった!?
 しかし命中の悪い俺は、丸めた雑誌は、犯人に当たらずに横を通り抜けていく。

「雑誌……?」

 犯罪の1人は、雑誌に目を向いた。するとその瞬間を狙った神崎さんは、勢い良く飛び出すとその犯人目掛けて回し蹴りをする。
 倒れた犯人は、拳銃を落とした。もう1人の犯人は、慌てて神崎さんに目掛けて発砲するが神崎さんは、素早く回転するように避けた。
 そして落とした拳銃を拾いあげた。すぐに態勢を立て直し、スプリンクラー目掛けて撃つ。
 一瞬の出来事だった。スプリンクラーは撃たれた衝撃で誤作動を起こし、勢いよく水が噴射する。慌てる犯人達。

「くそっ……絶対に許せねぇ!!」 

 残った犯人の1人が神崎さんに拳銃を向けてきた。しかし濡れた床のせいで後ろに尻餅をついてしまう。神崎さんは、それを見逃さずその犯人に向かって回し蹴りをした。見事にヒットして気絶させた。や、やったー!!
 だが喜ぶのは、つかの間だった。
 最後の1人は、恐怖に怯えながらも近くに居た女性客を捕まえて人質にしたのだ。

「う、動くな!!もし少しでも動いたら、この女を殺すからな!?」

「キャアッ~助けて」

 な、何て卑怯な……!!
神崎さんも女性客を人質に取られたため動きがピタッと止まった。
そのため、せっかくこちらが優先していたのにピンチなってしまう。
 また犯人達の思う壺だ。どうしたら……。
犯人の1人は、ニヤリと笑うと自分のPCウォッチに話しかけた。

「赤薔薇会に連絡しろ」

『赤薔薇会に繋ぎます』

 今、何て!? すると犯人は本人にしか見えないように画面と音声設定した。