俺男だからよく分かる。どうしようと思っているとPCウォッチに反応が。あ、メールの方だ!
俺は、慌てて友人からだと言い離れた場所で中身を確認する。すると……。
『丁度いいから泊まらせてもらってこい』と書かれていた。って……おい。
神崎さんの言葉に俺は、唖然とする。
泊まらせて来いって……俺を見捨てる気ですか!?
結婚詐欺の上にそんな部屋に一夜を過ごすなんて俺の身の方が危ないじゃないか。
もし俺の正体がバレたら何をされるか分からないぞ? 命の危険だって。
あ、でもそれを知っているってことは、何処かで俺らの話を聞いているってことか? いや。それでも……危険過ぎる。
「加奈子さん? 友人の方は何て?」
「あ、はい。友達が今日は、家の事情でダメになったらしいです。なら、お邪魔させてもらおうかしら……フフッ」
ちょっ……何を言っているんだ!? 自分。
咄嗟だとはいえお邪魔するとか言っている自分に驚いてしまった。もう頭の中がパニックなってしまう。しかし佐々木慶一は、やる気満々だった。
断るとしつこそうだ。仕方がなく俺は、佐々木慶一の自宅について行くことに。
もう……どうにでもなれ!!
半分やけくそになりながら向かった。彼の自宅は、古いが庭もある和風の二階建ての一軒家だった。意外だ……マンションを案内されると思ったのだが。
中に入ると、確かに住んでいる形跡がある。自分の自宅か? いや……まさか。
しかし表札も『佐々木』になっている。
「実は、母と二人で住んでいたんだ。今は、母が病で長く入院しているから一人で住んでいるようなものだけど」
「まぁ……お母さん病気で?」
まさか、こんなところで母子家庭設定を入れて来るなんて思わなかったから驚いた。すると佐々木慶一は、フッと寂しそうに笑う。
「あぁ……悪性な癌だって。長くないと言われてる。まぁいい治療法が見つかり手術をすれば全て取り除けると言われていたけど……高額でね。俺を苦労して刑事にさせてくれたから、どうにかしてあげたいけど……あ、ごめん。辛気臭い話をして。あがって。コーヒーでいいかな? 今淹れるから適当に座ってて」
「あ、私が淹れます。お邪魔させてもらったのに何もしないなんていけないわ」